「通信制高校ってよく聞くけどどんなところ?」「通信制の高校に進むことも考えているけどよくわからないから不安」
そう思っている方が少しでも不安を減らし自分に合った選択ができるように通信制高校を卒業した私が通信制高校とはどんな学校なのかをお話しします。
通信制高校とは
通信制高校とは、学校ではなく自宅をメインの学習拠点とし通信による教育を行う学校です。
スクーリングと呼ばれる、授業を受けるために登校する日もありますがこれは単位修得のために定められた時間出席するだけのもので、主な学習は自宅でのレポート作成になります。
入試
通信制高校の入学試験は書類審査や面接が多いため、筆記試験を採用していない場合内申点や学力は必要ありません。
しかし、入学後の学習では中学での知識が必要なので勉強していて損はありません。
卒業資格
通信制を卒業した場合、全日制や定時制と同様、高校卒業資格を取得できます。
卒業するために必要なこと
通信制高校を卒業するためには、必修科目の履修、合計修得単位数74単位以上、特別活動に必要時間数参加することが必要です。
単位を修得するにはスクーリング・レポート提出・テストをクリアする必要があり、これらは科目ごとに必要な提出枚数や時間数などが異なります。
合計修得単位数が74単位以上であっても、特別活動の時間数が卒業条件に満たない場合は残念ながら卒業ができないので卒業条件はよく確認しなければなりません。
卒業率
文部科学省が令和2年度に発表した高等学校通信教育の現状についてでは平成29年度間の通信制高校の入学者数は70,691人でそのうち私立が57,939人、公立が12,752人となっています。
3年間の在籍で卒業とし、令和元年度間の卒業者数を見てみると合計が60,691人で、そのうち私立が52,649人、公立が8,042人となっています。
転入生や編入生、4年以上の在籍で卒業した人数なども含まれているので正確な数字はわかりませんがこの数字だけを見ると私立の卒業率は約9割なのに対し、公立は6割強です。
私立と一括りに言っても様々な学校がありますがサポートが手厚い学校だと卒業率はかなり高いようです。映像学習を取り入れているところが多いので学習面が心配な方には私立がおすすめです。
公立全体の卒業率は6割強となっていますが、卒業率が3割を切る学校は少なくありません。
実際に、私が通った学校の卒業率は3~4割でした。
卒業率=難易度ではありませんが「通信制は勉強ができなくてもいい簡単な学校」という認識だけで入学すると、かなりギャップが大きいかもしれません。
公立はテスト日までに対象のレポートが合格しておらずテストの受験資格がなくても、規定日が近づいているのに単位取得の条件をクリアしていなくても学校からの連絡はありません。自分で確認しなければ、気づいたときには既に単位を取れない状況になっていることもあります。
毎月の学習進度表を確認して自己管理しなければならないので、それができずに学習が進まず、単位をとれなかったり中退してしまったりというケースが多いです。通信制高校は全日制に通うよりも楽だと考える人も多いですが公立の通信制高校に通う場合は学力よりも自己管理能力が必要になります。
スクーリング
通信制高校とはで、少し触れましたが通信制では授業を受けるために学校に行くことをスクーリングと言います。
学校によって登校頻度は異なりますが、基本的に毎日登校する必要はありません。月や年単位で日数や時間数が定められている学校もあれば、週〇日コースなどのコースを選ぶ学校、1年に1回泊りがけで行う学校もあります。
時間数の場合は、科目によって必要な時間が決まっているので自身の受講する科目の時間数と時間割を照らし合わせてスクーリングの予定を立てます。スクーリングは受講している科目だけを受ければいいので1日授業を受ける日もあれば途中から登校したり途中で下校したり、日によって予定が異なります。
スクーリングの内容は?
通信制の授業はレポートの解説がメインです。
対象のレポートが未完成の場合は解説を聞きながら授業の中で作成することもできます。
形式的には全日制の授業とあまり変わらないのですが、科目によっては授業ではなく完全にレポート作成の時間になっていて、わからない箇所があればその都度個別に質問し黙々とレポートを仕上げていくという場合もあります。
ほとんどが生徒参加型ではなく、教師が授業を進めていくスタイルなので基本的に発表などはありませんが、稀に質問を投げられる可能性があるので自由席の場合は当てられないようにできるだけ後ろの席に座りましょう。
レポート
レポートと聞くと難しいのかなと思われるかもしれませんが、ほとんどが穴埋め問題です。
一から作成するわけではなく教科書などを見ながら答えを探し完成させていきます。記述問題もありますが「意見を書きなさい。」などでなければ教科書に答えがあるので教科書をしっかり読めば難しくはありません。
ただ、通信制は教えてもらう機会が少なく自分で勉強しなければならないので数学などの理解しないと埋められない科目は苦戦する人が多いです。
進学に力を入れている学校以外、内容は基礎的なものですが他人が説明してくれるわけではないので「自分で教科書を読んで理解すること」が必要です。(映像学習を取り入れている学校もあります。)
レポートの枚数は学校や修得予定の単位数によって差はありますが、年間で65~80枚ほど提出する必要があります。テスト日までに対象のレポートが合格していなければならないので計画を立てて取り組むことが重要です。
テスト
テストは年に2~3回程実施されます。
1回につきレポート1~3枚分がテスト範囲になります。基本的にレポートの問題がそのまま出題されるのでレポートを理解して、ある程度暗記していれば合格点(30点のところが多いです)を切ることはありません。
レポート作成時に教科書から答えを探すだけで理解をせず、テスト前に復習や暗記をしなかった場合は30点をとることは難しいかもしれませんが、ほとんどがレポートから出題されるため難易度自体はあまり高くありません。
自分の意思で選ぶこと
「通信制は誰でも入学できる」という認識は間違いではありませんが、だからといって通信制を他がダメだった時に残された最後の選択肢と考えてほしくありません。
通信制に入学する理由は、
- 全日制の高校に馴染めなかったから
- 過去いじめにあって学校に通うことが難しいから
- 高校を中退したり金銭的に高校に通えなかったりしたけれど、大人になってからもう一度勉強しようと思ったから
- 資格取得や目的を達成するために高校卒業の資格が必要だから
- 全日制の高校では学業と自分のやりたいことの両立が難しいから
など様々です。
これらの理由が通信制という学校が存在する意味です。
不登校になっても勉強をしたほうがいい理由で触れていますが、私にとって通信制高校はとても理想的な環境でした。毎日学校に行かなくていい、人と関わらなくていい、家でできるような勉強のためにわざわざ学校に行って何時間も授業を受けなくていい、そして自分で時間をつくることができる、通信制の存在を知った中学の頃の私は迷わずここに行くと決めました。
親には反対されましたが、全日制の高校に通い続けることはできないと自分でわかっていたので親が折れるのを待ち、意見を変えることはありませんでした。
その間に親も通信制について調べてくれていたようで「通信制は3年で卒業するのは難しいよ。全部自分でやらないといけないんだから。それでも3年で卒業できる?」と聞かれましたが、もともとそのつもりだったので必ず3年で卒業することを約束し、納得してくれました。
親はおそらく、私が3年で卒業できるかどうかはほとんど心配していなかったと思います。その心配はなかったのにギリギリまで反対していたのは、やはり普通に他の子と同じように全日制に通ってくれたほうが安心だったからでしょう。家庭環境的に親が私にそう願うことは仕方がないことで、できることなら願う道に進みたかったのですがそれが不可能だと私自身よくわかっていたので私の中に全日制に進むという選択肢はありませんでした。
通信制であれば3年間学校に行って卒業できる自信があったので、全日制ではなく自分に合っていると思った通信制を選択しました。
「行けそうな学校がないから」「形だけでも高校に通っていた方がいいから」「通信制は勉強ができなくてもいい学校だから」そう思って入学した人はコツコツ続けられる性格でなければ、1年間で修得予定だった単位数を修得できず3年での卒業が難しくなったり、続けられずに中退したり、現実とのギャップに躓くことがあります。
通信制で学習するためには、自己管理能力とモチベーションの維持が必要です。
全日制も定時制も通信制も合う合わないは人それぞれなので自分に合った学校を、自分の意思で選んでください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
関連記事:通信制卒業者が考える通信制高校のメリット・デメリットまとめ
コメント